古河城（古河市中央町）
渡良瀬川の改修によって、古河城はほぼ消滅してしまっている。わずかに残っているのは古河博物館の建つ諏訪曲輪の堀くらいであり、旧状を偲ぶよすがもない。
しかし、明治の迅速測図を見てみると、城の形状がしっかりと描かれていてその形状は一目瞭然である。これを現在の地形図に載せてみれば、旧状を復元することができる。
明治時代にすでに破壊されてしまったと思われる箇所は『正保城絵図』によって補ってみた。
渡良瀬川沿いの低地に築かれた水城で、直線連郭的な構造をしながら、本丸の辺りは環郭式になっている。また、あちこちに馬出を配置しているのも、いかにも近世城郭らしい構造である。
肝となっているのは、城の西側に長く延びている堤防で、これがなかったなら、蛇行する渡良瀬川に削られて、城は簡単に水害にあってしまうことになるだろう。
とはいえ、本格的に川が氾濫してしまったら、この程度の堤防では防ぎきれなかったのではないかと心配になってしまう。
古河城の場所。
(以前の記述）
古河城を東方上空から見てみた。古河城は渡良瀬川の改修工事のため現在はすっかり削られ、川原に埋もれてしまっている。
しかし、よく本に載っている赤外線による航空写真で見ると、郭や馬出しの形がおぼろげながら浮かび上がってくる。
例によって正保の城絵図を基にして復元してみた。今回御殿は描かなかったのだが、やはり建物が少ないとちょっとさびしいな・・・・。
郭の配置としては本丸と二の丸とが東西に平行して置かれ、間に馬出し郭がある。その南北に三の丸と頼政曲輪とが連郭式に並んでいる。
馬出し郭はこの城においては随所に見られ、三の丸や頼政曲輪との間にも見られる。
城の東側は沼地、西側は渡良瀬川という、水に囲まれた、まさに水城という体裁の城であった。
本丸には御三階櫓（天守）を始めいくつかの櫓が並んでいるが、変わった形状をしているのは菱櫓で、この櫓はＬ字型をしている。
御三階櫓は、名称は御三階であるが、最下層は２階分あり、実際は３層４重であった。この天守については古写真が残っており、形状を知ることができるのである。
特徴的なのは、本郭の東西の端に東帯曲輪、西帯曲輪という２つの帯曲輪が設けられていることである。これを置いた理由としては、直接船で城内に入れぬようにするため、水位調整、といったことが考えられるが、それよりも何よりも、渡良瀬川の防波堤としての役割が最も大きかったであろう。
しかし、この程度の防波堤で川の浸食を防げるはずもなく、江戸時代を通じて、洪水には悩まされた城であった。
古河城の東南１，５ｋｍの古河運動公園の中に古河公方館がある。中世のある時期までの古河城とは、そちらの館のことを指していたと思われる。しかし、古河公方館は周囲は沼沢地であるとはいえ、堀や土塁も小さく、また面積も狭いため、防御の要となすには苦しい場所であった。
そこで、戦国期のいずれかの時期に現在の地に城が築き直されたのではないかと思われる。それがいつのことなのかはっきりしないが、想像で言うなら、上杉謙信が越山して、足利藤氏を古河城に据え直した頃のことであろうか。
天正１８年（１５９０）、北条氏が滅びると、関東に入ってきたのは徳川家康である。家康は小笠原秀政を３万石で封じた。この時期に城は大改修された。
その後、関が原の役の後には、松平康長が２万石で入ってきた。彼は観音寺郭、百間堀などを築き、城に大改修を加える。
慶長１７年（1612）には小笠原信之が２万石で入城、さらに元和５年（１６１９）、奥平忠昌が１２万石で入城してきた。彼は辰崎郭を設け、日光街道を城に取り込み、また城下町の整備も行った。
元和８年（１６２２）、永井直勝が７万２千石で入城。
寛永１０年（１６３３）、土井利勝が１６万石で入城。この土井氏の時代に御三階櫓など多くの櫓や諏訪曲輪が建造されたという。
さらにその後、堀田、藤井松平、大河内松平、本多、松井松平、再び土井とめまぐるしく城主が変わり、明治維新を迎えるにに至った。
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| 現歴史資料館脇にある土塁。これが現存するわずかな遺構の一部である。 資料館はかつての諏訪曲輪跡に建てられたと思われ、その周囲には水堀の跡も残っているのだが、こちらはきれいに整備されすぎていて、まったくリアリティがない。 |
ここが古河城跡。といっても、なーんにもない。中央奥の鉄塔の辺りが本丸の跡らしい。渡良瀬川の改修で見事に消滅してしまった。 |
古河公方館は古河総合公園内にある。とても大きな公園なので、場所を探すのには苦労しないであろう。
居館は、池に囲まれた比高4ｍほどの半島状台地を利用した水城に近い形態のものであった。現状では堀切の先の50ｍ×100ｍほどの部分が居館跡と見られるが、これだけということはないだろう。
民家園のある所も、北側が城塁状に見えるので、ここを２郭というように見てもよさそうである。しかし、仮にも公方の館なのであるから、これだけでも小さすぎると見るべきであろうか。
民家園の東側がちょっと窪地になりそこが駐車場になっているのだが、ここも堀の跡かも知れず、その東側にはさらに郭が展開していた可能性もある。
かなり東側にも切通しの道があったような記憶があるのだが、その辺りが東端であるのかもしれない。現在の池というのも、昔はもっと広範囲に広がっていて、周辺は沼沢地であったのだと思われる。
永享の乱とそれに続く結城合戦で、いったん、関東公方は消滅した。しかし、８年後の宝徳元年（1449）、元服した永寿王は足利成氏を名乗り、再び関東公方となるに至った。
関東公方となった成氏は、父や兄弟をあの世に送った上杉氏を許すことはできなかったようで、結城・武田・里見らの協力を得て、享徳３年（1454）、上杉憲忠の自宅を急襲、彼を殺害した。これが享徳の大乱の始まりとなるのであるが、この間の経緯は「鎌倉大草紙」に詳しい。
成氏は当初こそは優勢にあったが、幕府が成氏を危険視し、上杉氏を後押ししたことから、しだいに劣勢となっていき、翌年には鎌倉を終われることとなってしまった。
その成氏が居館としたのがこの鴻巣館（古河公方館）であるという。これ以降、関東公方は、古河公方と呼ばれるようになる。その後、古河公方を中心に関東では戦乱が続いていくのであるが、この館では要害性が心もとないため、やがて公方は、古河城を築いてそちらに移っていくこととなるのである。
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| 民家園の外れに建つ城址碑と案内板。 | 左の城址碑の脇にある堀切。 |
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| 堀切の先の虎口。しかし、後世切り広げられたような形跡もあるので、旧状どおりではないのかもしれない。 | 池の西側から館を見た所。池ではたくさんの人が釣りをしていた。「釣り禁止」の立て札が建っていたのだが、実際には駐車場がいっぱいになるほどの釣り客で賑わっていた。釣りの大会でもあるのかな？ |
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| 南側の土塁のようなものと堀の跡。 | 民家園の土手も城塁らしく見える。 |
| （以前の記述）古河公方の館の跡は、古河城の１．５ｋｍ東南、古河総合公園内にある。小規模な居館の跡で、堀と土塁が一部残っている。台地は比高3，4ｍほどと大した高さはないが、両脇には池があり、これが天然の堀をなしていたのであろう。この低い台地の先端部に２つの空堀を掘り切って、二郭が存在していたと思われる。一番先端部の本郭の手前の空堀の前に案内板と碑がある。 関東管領上杉氏との戦いに敗れた関東公方成氏は、梁田氏らを頼ってこの地にやってきて、ここを本拠地とした。ここは手狭なため、やがては古河城の地に移ることとなるが、それまでの間、ここを本拠地としていた。 二郭には茨城県内のどこかから移築してきた２軒の古い民家が展示されており、自由に見学することができる。土間を配した昔風の民家は実に懐かしい気分にさせてくれる。私が子供の頃、田舎だったせいか、そうした土間風の民家はまだあちこちに残っていたのである。 |
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