福岡県那柳川市
＊参考資料 『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会） 『福岡県の城郭』（福岡県の城郭刊行会） 『日本城郭大系』
＊参考サイト 城郭放浪記
蒲池城（柳川市西蒲池）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
城址碑の場所 三嶋神社の場所
蒲池氏の居城というだけあって、かつてはかなり広大な城だったようだが、宅地化や道路の整備などによって、旧状を知るよすがは少なくなっている。
新しい国道の東側に立派な城址碑と案内板とが建てられている。しかし、これが城のどの位置に当たっているのかが分からない。
城址碑の前には木が植えられているのだが、木が成長しすぎているために、城址碑はどこから撮ってもちゃんと撮影できないようになってしまっていた。
西方にある三島神社の周囲には堀が巡らされており、ここが主郭だったのではないかという説もあるようだが、主郭にするには面積が小さすぎると感じる。
実際の主郭はすでに宅地に埋もれてしまっているのではないだろうか。
話は変わるが、確か松田聖子は福岡県の出身で、本名が蒲池法子だったと思う。彼女の先祖は、当地域の勢力者であった蒲池氏と何か関係があったのであろうか。
蒲池城は平安時代に藤原純友の一族によって築かれたと伝えられているが、これはいかにも怪しい感じがする。
確実なのは、その後、蒲池氏の代々の居城となったということである。
後に蒲池治久の時に柳川城が築かれた。当初は蒲池城が本城で柳川城は支城だったが、後に本城を柳川城に移転していくことになる。
その後も蒲池氏は大きな勢力を有していたが、天正9年(1581)に蒲池鎮漣は、竜造寺隆信に猿楽の催しに誘われて佐賀に赴く。
そこを竜造寺氏の兵の手にかかって暗殺されてしまうのであった。竜造寺隆信もなかなかえげつないことをやってのける武将である。
これによって蒲池氏は滅ぼされ、柳川城等は竜造寺氏に奪われることとなった。
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| 三嶋神社の堀 |
三嶋神社の堀 |
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| 三嶋神社の堀 |
堀 |
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| 堀 |
堀 |
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| 城址碑 |
城址碑 |
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| 案内板 |
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今古賀城（柳川市三橋町今古賀）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
今古賀城の場所（今古賀公民館）
今古賀のコミュニティセンターのある辺りが今古賀城の中心部だったと思われる。
周囲の道路は狭隘だが、コミュニティセンターまで来れば、車を停めておくことができる。
周辺を巡っている水路が堀の跡だったようである。
特にコミュニティセンターの西側はいかにも堀のような水路が残されている。
ただ、本来何郭ほどがあったのかまではよく分からない。
今古賀城も蒲池氏によって築かれた、柳川城の支城である。
城番として立花右衛門が在城していたと伝えられている。
天正9年(1581)、蒲池鎮漣は竜造寺隆信に暗殺されてしまう。
その後の竜造寺氏の柳川侵攻によって今古賀城も落城してしまうことになる。
蒲船津城（柳川市三橋町蒲船津）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
蒲船津城の場所 蒲船津城の案内板の場所 北ノ屋敷の場所
蒲船津に次郎丸といった地名が残されており、その周囲に堀によって囲まれた２つの郭が見受けられる。
この辺りが蒲船津城の中心部だったかと思われる場所である。
ただし城の案内板は、その北側の熊野神社の前に立てられている。熊野神社の周囲にも堀が巡らされており、これも蒲船津城に関連した施設があった場所の可能性が高い。
また、北西に北ノ屋敷と呼ばれる、水路を巡らせた方形の区画が認められる。
ここにも城館が存在していたようである。
蒲船津城は蒲池氏の支城で、蒲池氏家臣の蒲池益種が城番をしていたという。
柳川城の当方を守るための支城であった。
天正9年（1581）、蒲池鎮漣が竜造寺隆信によって暗殺されてしまうと、竜造寺氏の家臣鍋島氏によって攻撃され、益種らは奮戦及ばず討ち死にしてしまった。
城の南方に戦死者の塚があるとされる。
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| 案内板 |
熊野神社の堀 |
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| 熊野神社の堀と案内板 |
堀 |
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| 次郎丸の堀 |
堀 |
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| 堀 |
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垂見城（柳川市三橋町垂見）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
垂見城の城址碑の場所
垂水地区にはかつてのクリークが良く残されているが、その北西角の川に囲まれた水田地帯が垂見城の跡である。
城があった部分は耕地整理が行われてしまったようで、城周辺のクリークは整理されてしまっているが、外側を巡っている川はかつて堀として利用されていたものだと考えられる。
この水田地帯の北側の道路端に城址碑がぽつんと取り残されたように建っている。
本来の城の構造はよく分からない。
垂見城の城主は蒲池家臣の垂水氏であった。
天文年間、周防国大内氏の家臣陶晴賢が筑後に侵攻した時にこの城に拠ったと言われている。蒲池氏が大内氏に内通していたということなのであろうか。
天正年間には、柳川城主蒲池鎮漣の家臣垂見常陸介が城主となっていた。
天正9年(1581)、蒲池鎮漣は龍造寺隆信に暗殺されてしまう。
その後、垂水城も、龍造寺氏に攻められて落城してしまった。
里見八幡神社（柳川市三橋町垂見）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
里見八幡神社の場所
垂水地区の西方にある里見八幡神社には二重の堀が巡らされており、いかにも城郭のような構造をしている。
ここが城であったという伝承はないが、城郭類似遺構あるいは参考地として紹介しておく。
城館だとしたら、少なくとも二重に堀を巡らせた輪郭式の城郭だったということになる。
いざという時に近隣の住民が立て籠る武装した神社ということもあったであろうか。
里見神社は由緒ある古い神社で、関ケ原合戦の前、立花宗重は重臣に里見八幡神社を参詣佐世、御神刀を奉献して戦勝祈願を行ったという。
白鳥城(柳川市三橋町白鳥）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
白鳥古戦場跡の碑の場所
白鳥地区には幅広の堀を巡らせた単郭の区画が残されている。
靴を横に倒したような形状の郭である。
この北側に白鳥古戦場跡の案内板が立てられている。
ということで城館ではなく古戦場ではないかという突込みが来そうなところであるが、堀に囲まれた形状はいかにも城館そのものである。
合戦に際して使用された陣城のようなものだったと考えられる。
『筑後将士軍談』には記載されていない城で、城として認識されていなかった可能性がある。
天正7年（1579）、竜造寺隆信は1万の軍勢を率いて蒲池氏を攻撃するために進軍してきた。その際に白鳥および瀬高で合戦になった。
城というよりは古戦場というべき場所であるが、いかにも城館らしい雰囲気を残している場所である。というか、これは城でいいでしょう。
塩塚城(柳川市大和町塩塚）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
塩塚城の城址碑とミニチュア天守の場所」
塩塚地区にもクリークが結構よく残されている。そのうちの半円形に堀が囲まれた部分の道路脇に城址碑が立てられている。
またそのすぐ脇にミニチュアの模擬天守も建てられているのだが、さすがにこんな天守があったはずがない。
ちなみに模擬天守は名古屋城の天守を模したものである（ご丁寧に金の鯱鉾まである）。
筑後なのであるから、どうせなら柳川城か久留米城の天守を模してほしかったものである。
これらの周囲の水路が城の形状を示しているものと考えられるのだが、明確な郭の区画は判然としない。
北城、塚屋敷といった地名が残されていることから、堀によって区画された複数の郭によって構成されていたものと推定できる。
『筑後将士軍談』によると、城主は塩塚石見守だったという。
この城も柳川城の蒲池氏の支城であった。
天正9年（1581）5月28日、竜造寺氏の攻撃によって、蒲池統安が守っていた柳川城が落城した際に、蒲池鎮並夫人の玉鶴姫ほか 108人は、統安の次男鎮貞が守る塩塚城に逃れた。
しかし塩塚城も竜造寺隆信と田尻鑑種によって攻撃され、城は落城し、108人は皆殺しにされたとのことである。
悲惨な話の舞台となった城である。
津留城（柳川市大和町六合）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
津留城の案内板と城址碑の場所
六合の中心部近くにあり、津留公民館の前のところに城址碑と案内板とが設置されている。
この一帯にはいかにも堀跡のように見える水路が巡らされている。堀をへだてて西方に2郭というべき小郭があり、現状からでは２郭構造の城だったように見える。
ただし、北側に「北城」という地名が残されているので、実際の城域はもっと広かった可能性がある。
『筑後将士軍談』によると、天正の頃、鷹尾城の田尻氏の家臣津留因幡守、田尻石見守が守っていたという。
田尻氏は蒲池一族であったが、竜造寺氏による蒲池攻めの際には竜造寺方となって、柳川城攻撃に参加した。
しかし、天正10年（1582）になると、田尻氏は竜造寺氏に反旗を翻す。
そのため津留城も竜造寺氏の攻撃を受けることになったが、鷹尾城を中心として、うまく防戦した。
籠城戦は1年にも及び、そうこうしているうちに有馬氏が島津氏と組み肥前への侵攻を企てているということが分かったので、竜造寺隆信は肥前へと兵を退却させることになった。
その際の津留城の城主は田尻鎮直であったという。
翌天正11年、竜造寺隆信は、島津・有馬勢と肥前島原の沖田畷で戦い、島津勢によって討ち取られてしまうのであった。
鷹尾城（柳川市大和町鷹ノ尾）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
高尾城の跡（琴平神社）
鷹尾城は矢部川の西岸にあった。現在も水路があちこちに残されているのがかつての堀の跡かと思われるのだが、現状から城の形状を復元するのはちょっと難しい。
かつての城域内と思われるところに城主田尻親種の墓所がある。
また、道路沿いにある琴平神社もかつての城と何らかの関係を有していたものであろう。
田尻親種の墓所にも琴平神社の所にも車を停められるスペースがあるので、車はそこに停めさせていただいた。
『筑後将士軍談』によると、鷹尾城は田尻伯耆守鑑種の居城であったという。
代々居城としていた田尻城は水が乏しかったため、永禄年間に鷹尾城を築いて居城を移転したとされる。
天正10年（1582）、田尻氏は島津方に属したため、竜造寺氏の攻撃を受けて籠城したが、翌年に開城となり、田尻氏は当地を去っていくこととなる。
しかし、その竜造寺隆信も、天正11年には沖田畷の戦いで戦死し、竜造寺氏は没落していく。
秀吉による九州平定後の天正15年には、立花宗茂が柳川に入部したのに伴い、重臣の立花織部介が鷹尾城に入城した。
関ヶ原合戦後、立花宗茂は改易となり、代わって田中吉政が入部してくると、柳川城の支城として宮川才兵衛が知行高6千石で入城した。
後に田中家の改易とともに廃城となったと考えられる。
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| 田尻親種の墓所 |
案内板 |
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| 田尻親種の墓所 |
田尻親種の墓所 |
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| 琴平神社の脇にある案内板 |
琴平神社 |
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鷹尾城Ⅱ（柳川市大和町鷹ノ尾）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
高尾城Ⅱの場所あたり
県道を挟んで鷹尾神社の西方一帯にも城の堀のような区画があちこちに残されている。
こちらも鷹尾城の遺構の推定地ということなので、簡単に鳥瞰図にして示しておく。
ただし、本当に城郭だったのかどうか、確証は持てない場所である。
とはいっても堀はよく残されているので、それらしい雰囲気はある。
中島城(柳川市大和町中島）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
中島城の案内板の場所
鷹尾城と同じく、矢部川に臨む縁部に築かれており、鷹尾城の支城と考えられている城である。
現在、周囲は宅地化されて遺構らしきものを見ることはできないが、宅地の中の空き地にお堂が祭られ、その脇に案内板が設置されている。
古い図を見てみると、二重の堀によって区画された郭を見ることができ、これが中島城だったのではないかと考えられる。地名も「二重」であった。
その南側にも堀を巡らせた単郭の区画が見られる。ここは外平という地名だったようで、外城といった意味合いだったかと思われる。
また、その西方に薩堀と呼ばれる地名があるが、これについてはエピソードがある。
天正10年代に島津氏が攻め寄せて来た時に、薩摩兵をこの堀際で食い止めたことがあったのだという。
その時の功績を称えて薩堀と呼んでいるとのことである。
中島城は、鷹尾城とともに立花氏の支城であった。
天正15年（1587）8月14日には、立花宗茂が重臣立花織部に、鷹尾城と併せて中島城の勤番をするように申し付けている。
関ケ原役で立花宗茂が改易となり、田中吉政が入部した際には、才兵衛という人物が中島城の在番を勤めていたという記録がある。
佐留垣城(柳川市大和町栄）
＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。
佐留垣城案内板の場所
佐留垣の戒音寺の一体が佐留垣城の跡と言われている。
周囲を巡っている水路がいかにも堀の跡らしく見える。
また、東側の堀の前面に城の案内板が立てられている。
佐留垣城は蒲池氏の支城であり、天正年間の城主は蒲池統春であった。
天正9年（1581）、蒲池鎮並を佐賀に呼び寄せて暗殺した竜造寺隆信は、当地域に攻め寄せ、塩塚城など蒲池氏の支城を次々と攻め落とした。
佐留垣城にも、竜造寺隆信の命を受けた田尻鑑種が攻め寄せてきた。
蒲池統春は城に籠って奮戦したが、結局、統春始め100人余りが全員討ち死にして城は落城した。
柳川市大和町にある「蒲池氏百八人塚」は、この時に殺害された人々を祀ったものであると言われている。
現在は平和な住宅地であるが、かつては悲惨な戦の舞台となった場所なのであった。
