福岡県那みやま市

＊参考資料　　　『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）　『福岡県の城郭』（福岡県の城郭刊行会）　『日本城郭大系』

＊参考サイト　　城郭放浪記

江浦（えのうら）城（みやま市高田町江浦町）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。

　　　　　江浦城の城址碑の場所


　国道208号線に県道59号線が交わる交差点が「江の浦本丸交差点」という名称になっており、道路の西側脇に江浦城本丸跡の城址碑が建てられている。

　車は城址碑のすぐ脇の空き地に停めておくことができた。

　江浦城はこの交差点を中心とする80ｍ×100ｍほどの長方形の単郭構造のものだったと思われる。

　周囲には水路が巡らされており、この水路のラインがそのままかつての堀を示していると思われるのだが、現状ではただの水路になってしまっており、城の堀らしさは失われている。




　『筑後将士軍談』によると、永江氏代々の居城であった。

　天正12年（1584）、永江勘解由平方家、田尻の家臣田尻了哲が鷹尾城の砦としてこれを守っていたという。

　天正15年、高橋統増が入部して、江浦城を居城とした。永江氏は高橋氏の家臣となった。

　田中吉政の時代には、田中主水が3860石で当地の城主となっていた。

　慶長15年（1610）には主水は久留米城に転出し、代わって田中河内が2万石で当城に入城した。

　後に元和の一国一城令によって廃城となったと考えられている。

堀跡	城址碑
城址碑	案内板
堀跡	堀跡

堀切城（みやま市瀬高町河内）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。


　　　　堀切城の場所。


　県道江浦瀬高線の東方で、玉垂神社のすぐ南側の位置である。

　車は玉垂神社の方に入り込んで、神社の入口に停めさせていただいたのだが、あまり駐車スペースはない。

　それよりも、県道西側にある公民館のところに停めさせていただくのがよさそうである。

　神社南側に堀状の水路によって囲まれた30ｍ×50ｍほどの区画がある。これが主郭の跡かと思われる部分である。
　
　この郭だけでは狭いので、周辺部にも郭が配置されていたのではないかと想像されるのであるが、現状では単郭の遺構しか認めることができない。

　堀切という名称からも、もっと堀は多かったものと推測する。

　1郭の南側に堀切寺屋敷跡とされる場所があり、ここも郭だったと思われる。





　堀切城の城主は大木宗繁、福山将監だったという。

　田尻城の支城であり、両者は城番を勤めていた。

　天正13年(1587)、島津勢が攻め寄せてきたため、落城してしまうことになる。

堀切玉垂神社	神社の案内板
堀	堀
堀	堀
神社

浜田城（みやま市瀬高町濱田）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。


　　　　　浜田城推定地１の場所　　　　　　　　　浜田城推定地2の場所


　浜田城は、浜田の天満宮の周辺にあったと推定されている。

　天満宮に隣接する東側には、堀によって囲まれた長方形の区画が現存している。これが浜田城の主郭だったのではないかと想像する。

　しかし、その南側にも浜田城の候補地とされる場所があり、現状ではどこが城址の中心部であるのかを確定することはできない状態となっている。

　県道を挟んで東側にも堀状の水路が見られる。この辺りまで城域内だった可能性がある。





　『筑後将士軍談』によると、浜田城は鷹尾城の砦であった。

　天正年間、田尻氏の家臣田尻大蔵がこれを守っていたという。

東側の堀	1郭の堀
堀に架かる橋	堀
天満宮

松延城(みやま市瀬高町松田）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。


　　　　　　　松延城本丸の場所


　県道から北側に入り込んでいくと、水田地帯の中央に比高6ｍほどの微高地が見えている。

　周囲は水田なので、これくらいの高さでもそれなりの高台に見えるのである。これが松延城の本丸跡である。

　周辺に車を停められそうな場所がなかったので、本丸跡まで車で乗り入れていったのだが、上には車をやっと回せるだけのスペースしかなかった。これは車で来るべきところではない。

　耕作している方の迷惑にならないように気を付けなければならないところである。

　この本丸を中心として、東側には東二の丸、西側には西二の丸という地名が残されている。

　さらに北城や南三の丸といった地名も周辺にあり、かつてはかなり広大な城域を有した城だったと考えられる。





　『筑後将士軍談』によると、天正12年（1584）、樺島式部が松延城に立てこもって竜造寺方の攻撃を防ぎ、蒲池鑑広を助けたという。

　田中吉政の時代には、小早川氏の元重臣松野主馬が1万２千石で当城に入城した。

　後に元和の一国一城令によって廃城になったと考えられている。

本丸を遠望	本丸への道
本丸の城塁	本丸内部
本丸内部	本丸内部
南側から	南側から。　中央が登城道。

大木城（みやま市瀬高町大廣園）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。


　　　　大木城本丸跡の城址碑の場所


　大廣園の玉琳寺の一体が大木城の跡だったと言われる。

　車は玉琳寺の駐車場に停めさせていただいた。
　
　玉琳寺の南西の道路を歩いていくと、木陰の中に「大木城本丸跡」と刻まれた城址碑が建てられていた。

　立派な城址碑なのに木陰にあるので、なかなか人には気づかれにくいのではないだろうか。

　ここが本丸ということは、やはり玉琳寺を中心として郭が展開していたのではないかと考えられる。

　現在もあちこちに水路は残されているのだが、明確な郭のラインを形成するまでには至っておらず、本来の形状はよくわからなくなってしまっている。




　大木城の城主は大木氏である。

　大木氏は宇都宮氏の一族だった。最初は蒲池氏に所属していたが、大木兵部少輔のときに龍造寺氏方に鞍替えした。

　竜造寺氏が没落して鍋島氏が実権を握ると、鍋島氏の家臣となった。

　明治維新の元勲の一人に肥前の大木喬任がいるが、彼はこの大木氏の子孫であった。

玉琳寺	堀跡
城址碑	城址碑
城塁跡	堀跡

宮園城（みやま市瀬高町大廣園）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。


　　　　宮園城の城址碑の場所（東照寺）


　東照寺の一体が宮園城の跡であるという。

　車は東照寺の駐車場に停めさせていただいた。

　東照寺の北側から西側にかけて大根川が流れており、これが堀として利用されていたようである。

　さらに境内にも堀が縦横に掘られており、これらがかつての郭の名残を示していると考えられる。

　東照寺の境内は広く、境内全体がかつての城域を示していると思われる。

　一番西側の郭のところに城址碑がひっそりと建てられている。

　城の東側が完全に区分されていないが、かつては堀によってきちんと区画されていたものと考える。

　堀がよく残されていて、散策していて楽しいのであるが、東照寺はとても立派な寺院で、あちこちにある建物を見学するだけでも有意義に感じる場所であった。




　『筑後将士軍談』によると、蒲池鑑広に所属した今村氏が宮園城に拠って敵兵を防いだという。

　天正12年（1584）のことで、蒲池氏が竜造寺軍の攻撃を防ぐために、今村氏に守らせたということらしい。

大根川越しに見る東照寺	大根川
霊宝殿	本堂
堀	堀
堀	堀
城址碑	堀
堀	多宝塔

竹井館（長者原屋敷・みやま市山川町尾野）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。


　　　　　　　竹井館の場所


　山川町尾野にある畑地帯の中に竹井館はある。

　館の南側に道路の余白があったので、車をそこに停めさせていただいて散策してみる。

　館跡の方に入り込んでみようと思ったところ「関係者以外立入禁止」「立入禁止」といった表示がいくつもある。

　一瞬、城内に入ることができないのかと思ってしまったのであるが、この表示は南端部にある花火工場についてのものであった。火薬を扱っている場所なのだから立入禁止にするのは至って当然である。

　ところが立入禁止をうたっていながら、柵は開けられ自由に出入りできるような状況になっていた。これで大丈夫なのだろうか？　ちょっと心配になってしまった。

　さて、実際の館跡は、その北側の畑の中である。事前に航空写真を見てみたのだが、100ｍ四方ほどの区画の北側には堀の跡がくっきりと見えている。

　西方の木が生えているところにも何かありそうである。

　ということで実際に行ってみたところ、西方には土塁と堀の跡がしっかりと残されていた。

　土塁の上には石碑が建てられていたが、城址碑ではなかった。

　土塁は途中までだが、堀は城域の北端までよく残されている。

　北側の堀の跡は航空写真でははっきりと分かったのだが、実際に訪れてみると、明瞭ではなかった。

　それでも一部の遺構がしっかりと残されているのはうれしい限りである。





　『筑後将士軍談』によると、牡丹長者の館跡で、長者原と呼ばれているという。

花火工場入口	郭内部
堀跡	堀跡
堀	堀
堀と土塁	堀と土塁
堀と土塁	土塁

田尻城（みやま市高田町田尻）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。


　　　　　　　田尻城の場所　　　　　　　登城道入口の場所


　田尻城は森山宮の背後にそびえる比高60ｍほどの山稜先端部に築かれていた。

　森山宮の前に車を停めて森山宮から登っていく方法もあるようなのだが、森山宮前の道をそのまま南に登っていくと、城のすぐ真下の畑に上がっていく道が付けられている。これが登城道である。

　登り口の少し手前に道路の余白があったので車をそこに停めさせていただいて上の畑への道を進んで行く。

　上の畑からさらに城内に向かって山道が付けられていたので登っていく。

　この山道の両側には腰曲輪状の段々が多数つけられていたのだが、遺構なのか後世の畑の跡に過ぎないのか、ちょっと判断がつきにくい。

　それを上がったところに尾根状の地形があり、中央に土塁が盛られている。ここが2郭である。

　堀切を隔てて正面の城塁を登ったところが1郭。

　ところが1郭は中央部が土塁状に盛り上がっており、建造物を建てられるほどの平場もない郭であった。これでは兵員は駐屯できないであろう。

　1郭の奥に堀切があり、その先が3郭となっているが、この辺りは倒竹がひどくて状況を把握するのが困難であった。

　帯曲輪状の段々は多数見られるのであるが、後世の畑作によるものが多いと思われ、実際の城域がどこまでなのか判断をつけがたい。

　実際の郭はそれほど広くなく、田尻氏の居城としては、思ったよりも規模の小さい山城であった。





　田尻城の城主は田尻氏であった。

　田尻氏は大蔵氏の出身である。大蔵氏は原田氏、秋月氏、高橋氏など多くの氏族を生み出している一族である。

　田尻氏の初代は田尻実種。

　その後代々田尻城を居城としていたが、天文17年(1548)に田尻親種は平野部に進出するために鷹尾城を築いて、居城を移転していった。

森山宮	登城道
登城道	段郭群の間を登る
2郭	2郭
1郭堀切	1郭
1郭	堀切
堀切	堀切
1郭	2郭
登城道	北側からの遠望

今福城(みやま市高田町今福）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。

　　　　　今福城の場所。

　今福池の西側、水天宮の祭られている比高20ｍほどの独立台地が今福城の跡である。

　水天宮には駐車場がないが、城のすぐ西側に集会所があり、そこの駐車スペースに車を停めさせていただいた。

　集会所の前の道路から切通状の虎口を通って2郭内部に入っていくことができる。

　2郭はすり鉢状の地形になっており、周囲には高土塁が巡らされている。もともとこのような地形があったのであろうか、特異な形状の城である。

　2郭の縁部には、土塁上に櫓台のような地形も見られる。

　2郭から階段を昇って行ったところが1郭である。ここに水天宮が祭られている。

　神社の建物は2基あり、1基は北側の参道石段の正面に向くように建てられている。

　2郭構造であるが、よくまとまった城郭である。




　『筑後将士軍談』によると、正治元年（1199）、三宅摂津守によって築かれたとする。

　三宅摂津守は翌年には大間城に移り、代わって今福城には家臣の小山左衛門尉が入城した。

　天文19年（1550）7月に、蒲池武蔵守鑑盛が田尻伯耆守親種と連合して数千余騎で今福城を攻めたという説がある。

　当時の城主は三池家臣の小山浄栄入道であったが、大間城ともども落城してしまったという。

南側から	入口
2郭	2郭
1郭へ	水天宮
北側の参道	1郭
2郭へ	2郭土塁
2郭土塁	虎口
虎口

小田城（みやま市瀬高町小田）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）及び城郭放浪記の図を参考にした。


　　　　　小田城入口の場所。


　小田城は、みやま市の南東にそびえている比高190ｍほどの山稜に築かれている。集落からは1，2ｋｍほどと、かなり奥地に築かれた山城である。

　この山稜周辺には舗装林道が付けられており、上記の入口の場所まで車でアクセスすることができる。

　この場所からは車は通行止めとなっているので、近くの路肩に車を寄せて停めて、後は歩いていくことになる。

　林道を150ｍほど進むと、左手の山稜方向に登っていける作業林道が見えている。これを登っていくのである。ここから城内までは比高50ｍほどである。

　道なりにどんどん進んでいくと作業林道は終点となる。

　後はそのまま山道をまっすぐ登っていくと、最初の横堀のところに出る。城内に入ってきた感じである。

　この城の特徴は横堀を何段にも形成していることである。それもかなりの土木量となっている。そうとうに大きな勢力でなければ築けない城である。

　それらの城塁の上が2郭。さらに一段登ったところが1郭で、まとまった郭はこの２つだけである。

　1郭の中央部には塚が盛られている。

　1郭から北側下にかけて竪堀が長く降りており、その先に三重の堀切が掘られている。尾根続きを分断するためのものである。

　2郭の周囲にも横堀が何段も構築されている。

　2本目の横堀は堀幅が狭く、下の堀と比高差の少ない状態で接続している。

　横堀の内部面に石積みを置いているのも特徴の１つである。

　一番下の横堀との比高差はかなりある。そしてその下に深い堀切があり、南東の尾根との間を断ち切っている。

　堀切は竪堀となって下方に落ちていく。

　この地域の城でこれだけ横堀を何段も掘っているのはとても珍しい。城の性質を考えるうえで、いろいろと想像してみたくなるところである。





　『筑後将士軍談』によると、明応、文亀の頃、溝口常陸介、同帯刀が小田城を守っていたという。

　しかし、これだけ大きな城であるから、実際にはもっと大きな勢力が影響を及ぼしていたのではないだろうか。

　大友氏、竜造寺氏といった勢力の対峙する軍事的緊張感が、この城郭と関連しているように思えてならない。

この先の車両通行止めの林道を進んで行く。150mほど先で左上に登って行く林道に入る。	林道の終点から竪堀状の小道を登る。
最初の横堀	城塁
横堀	横堀
2郭	竪堀
竪堀	三重堀切
三重堀切	三重堀切
城塁	堀切
石積み	横堀
横堀の内側には石積みがある	横堀と石積み
横堀と石積み	横堀と石積み

横堀	横堀
横堀と石積み	横堀
横堀と石積み	横堀
横堀	横堀
堀に架かる石橋	横堀
畝状竪堀	畝状竪堀
畝状竪堀	横堀
横堀	横堀
横堀	横堀
腰曲輪	腰曲輪