＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。知徳城入口の場所 神社参道入口の場所
千徳城は広川小学校の東側にそびえる比高30ｍほどの山稜に築かれている。
山稜の中腹部には熊野神社が祭られており、その参道を登ればすぐなのだが、この参道は小学校のグラウンドの真ん中を通らないと行けないようになっている。
また、参道入り口付近には車を停められるスペースがない。
昨今の状況を考えると、小学校に無断で入って行くと不審者扱いされかねない。
車は小学校に停めさせてもらい、ちゃんと小学校の許可をもらってから、神社の方に向かうのが無難かと思われる。
私が訪れた日は土曜日なので、職員も子供もいないだろうと思って参道入り口からグラウンドに入って進んでいたのだが、小学生が何人かそこで遊んでいた。
「神社はあっちだよね？」と聞くと「そうです」と答えてくれた。
石段を登ったところが熊野神社である。さらに一段上にも神社がある。
その脇を通っていた山頂部が長方形の平場になっている。ここが千徳城の主郭である。
削平はされているものの切岸も深くは掘られておらず、あまり要害性は感じられない。
ただし西側に張り出し部分をもっているのが、やや技巧的に感じられた。
郭と思われるのはこの部分だけであり、後は東側に帯曲輪を配置していることを除けば、ほとんど自然地形のままである。
あまり念入りに造られた城郭という感じはしない。
単郭で小規模な城郭である。城というよりは居館といったイメージである。
帰り際にも、さっきの小学生がいたので「さようなら」と声をかけると、
「お疲れさまでした！」とさわやかに返事してくれた。人はちょっとした挨拶だけでも気分がよくなるものなのであった。
知徳城は、『稿本八女郡史』によると、天正12年（1584）に山下城の蒲池鎮連の家臣・一條和泉守が居城としていた。
翌13年に竜造寺方の山下城攻撃があり、その際に和泉守兄弟が出陣して戦ったが、討ち死にして千徳城も落城してしまったとのことである。
