麻底良城　鵜木城　長尾城　夕月城　岩切山城　休松城　坂田城　稲荷山城　荒平城　坂田城　余湖

福岡県朝倉市村

＊参考資料　『福岡県の城郭』（福岡県の城郭刊行会）　　『日本城郭体系』

麻底良城（左右良城・朝倉市把木志波）

＊鳥瞰図の作成には『福岡県の城郭』を参考にした。

　麻底良城は、福岡の６端城の中では最も南端にあり、大分との国境に近い位置にある。豊前勢力との境界を監視するための城郭であったと思われる。

　２０１４年３月１日（土）、てっちさんとの福岡オフで、最初に訪問したのが、この麻底良城であった。

　麻底良城は日田市との境界に近い麻底良山に築かれている。麻底良山の比高は300ｍ近くもあり、かなり遠くからでもそれらしき山容を確認することができる。

　山頂には麻底良神社が祭られているので、主郭を目指すためにはこの神社の参道を通ればよいのだが、この神社はナビの地図などには載っておらず、これがちょっと分かりにくい。神社参道の下にある普門院は地図にも掲載されているので、まずはこれを目指す。この寺院に関しては、かなり遠くからでも案内表示が出ているので、それに注目していれば迷うことはない。

　譜門院の前を過ぎると道は狭くなるが、それでも普通車で十分に走れる道である。そうして数百ｍほど走ると、神社の入口が見えてくる。そこに大きな城址碑も建てられている。その少し先が参道入口であり、駐車場もある。ここまで車で来ることが可能である。ここから主郭までの比高は180ｍほどある。

　下の社殿を抜けると、そこは柿畑となっている。知らなかったのだが朝倉市は柿の名産地でもあるらしい。参道はこの柿畑の中を抜けて右手に曲がっていく。後はちゃんとした山道を進んでいけばよいのであるが、柿畑の先辺りの部分は、時期によっては草刈がされておらず、道が分かりにくくなっていることもあるらしい。幸い私が訪れたときには途中にヤブはなく、まったく迷うこともなく先に進んでいくことができた。（googlemapの航空写真ではこの道をはっきりと確認することができる。）

　山自体はかなりの急斜面であるが、参道はジグザグに付けられているので、わりあいきつくない山道である。これを進んでいくと、上の方で犬の「キャンキャン」という鳴き声が聞こえてきた。複数の犬である。

「ハンターでもいるのかな」と思ったその瞬間、すぐそばを猛烈な勢いでイノシシが斜面を駆け下りていった。そしてそれを追う数匹の猟犬。猪が下の方に降りていった瞬間、下からは「ドバーン！」という散弾銃の銃声。どうやらイノシシは仕留められてしまったようだ。こんな感じで、イノシシ狩りをすることもあるようなので、時期によってはハンターに気をつけた方がよさそうである。猟犬が苦手という人も、注意が必要だ。

　さて、そんなこんなで参道を進んでいくこと２０分。山頂近くになり、道が２つに分かれている。ここを左手に登っていくと、立派な石段があり、その上が腰曲輪になっていた。そこに石の祠が縦に４つほど並んでいる。ところで、この石段だが、遺構なのであろうか。麻底良城は石垣を各所に用いた城郭であるので、石段を有していたとしてもまったく不思議はないのだが、この山城のものとしては、ちょっと立派過ぎる感じもする。神社が祭られているわけだから、後世の神社普請に伴うものである可能性も高いと見るべきであろう。もっとも石段の脇には崩れかけた石垣もあり、これらは遺構と見てよさそうである。ということは少なくとも石段のある程度の部分は遺構である、ということなのだろう。

　石段を登った山頂が主郭である。主郭は長軸40ｍほどの郭であり、中央に社殿が鎮座している。しかし、何の変哲もない空間で、ここだけ見たら、城郭らしさはあまり感じられない。しかし、裏側に回りこんで少し斜面を降りてみると、そこにはそれなりの石垣が積まれているのが分かる。やはり城郭なのであった。ちなみに、１郭の脇には瓦の破片がたくさん落ちていたのだが、ちょっと新しそうなものであった。遺構の瓦ではなさそうに見える。下の案内板によると、平成１０年に瓦を葺き替えているとのことなので、これはその際のものなのであろう。その当時、ご神体の移座を行った際には、突然「ボーンボーン」という山鳴りがしたり、不思議な現象が起こったとのことである・・・・・。霊験あらたかな山であるらしい。

　さて、普通に参道を登ったら、この主郭を見ておしまいになってしまうところであるが、実際の城郭は東西に延びる尾根に複数の郭を配置している。したがって、遺構を確認するためにはこれらの尾根部に進入していく必要がある。しかし、尾根部分は整備されていないので、ここから先はヤブとの戦いである。

　まずは西側の４郭方向を目指していくことにする。４郭には、１郭下の腰曲輪から道が付けられているので、これを進んでいけばよい。道はそのまま下の郭の土塁に接続している。４の右側の郭である。この郭はちゃんとした加工がされておらず、あまり平坦ではない。しかし４郭との接合部分の北側には切り通し状の空間があり、これが北側下の郭とを繋ぐ虎口であったようである。また、南側にも道が付けられており、その下方に石垣組みの櫓台のようなものがある。

　４郭はきちんと削平された空間となっていた。この郭の先端近くには古そうな瓦の破片が散らばっていた。これは黒田時代に存在した櫓の遺物であるのかもしれない。この郭には土塁などはないが、城塁を少し降りてみると、そこには石垣がしっかりと積まれていた。もっとも現状では高さは最大で４段ほどではあるが。崩落してしまった部分も多いようで、あちこちに石が転がっている。

　その斜面をさらに降りていった先が５郭である。この郭も４郭に近い方の部分はあまり平坦ではない。また、ヤブがひどくてあまり見通しが利かない状態になっている。

　手持ちの図面を見ると、ここから４郭下の側面部を通って、参道途中にあった石祠のところに出られるようになっている。というわけで、この側面部の道を進んでみたのだが、斜面が急なせいか、道が途中崩落してしまっているようで、なんだかよく分からなくなってしまっており、歩行は困難を極めた。

　それでも石祠のところから、何とか参道に戻ることができた。そこから今度は東側の３郭を目指していくこととする。石祠のところから岩のある部分を越えて、東側の角辺りから道が付けられているようである。ということで、３郭に続く道を進んでいったのだが、こちらもまたあちこちで崩落してしまっており、一筋縄ではいかなかった。それでもなんとか斜面を進んでいくと、やっとのことで３郭と１郭との間の堀切に出た。この部分は１郭と３郭との間の暗部になっているので、堀切と呼んで間違いないと思うのだが、堀底の幅が２０ｍほどもあり、一見すると、堀底というよりも郭の１つのようにも見える。

　ここから東側が、城内で最大のスペースを有する空間となっており、兵站地点としては、城内で最重要な区画であったと思われる。そのためか、城塁の縁部分にはしっかりとした石積みが見られる。２郭と３郭には多数の建物も存在していたのではないだろうか。

　この城内で最大の見所というべき箇所は、２郭の西側下の空間である。城塁の折れによって三角形状の小空間が形成されているが、ここは枡形というべき空間であったと見られる。この枡形の周囲には城内でもっとも規模の大きな石垣が見られる。近世城郭のそれと同様の規模の石を積んだものである。また、あちこち崩落してしまっているが、この空間内には多数の石が転がっており、本来、枡形周囲を石垣で囲んでいたものと推測される。この枡形は３郭の北側縁につながっており、本来の大手道は、２郭の下の郭から枡形を経由して３郭に接続し、そこから現在の参道の方に回り込んで主郭に続くようになっていたのではないだろうか。現在の参道はあまりにも一直線に主郭を目指しすぎており、後世に付けられたものである可能性が高いと考えられる。

　麻底良城は、豊前領との国境を守備するという点で、６端城の中でも特に重要な城郭であったと思われる。そのため各所に石垣を積み上げ、黒田氏の手になる部分を随所に見ることができるが、思ったほど大きな城郭ではなかった。それなりに見所もある城郭であることは間違いないが、主郭の神社以外はまったく整備されておらず、あちこちの道も崩落しており、歩きにくい。探索には注意を要する城郭である。


麻底良神社入口。これが登城道入口でもある。駐車場もあるので、車も安心して停められる。	登り始めると、柿畑の中を通っていくことになる。道はしっかりとしている。正面の斜面を右側に回りこむようにして山道は続いていく。

１郭への石段。後世の改修の可能性もある。	１郭にある麻底良神社。高い山上にあるので、平素はお参りに来る人もあまりいないのではなかろうか。

１郭背後の城塁途中にある石垣。	４郭東側の郭から見た４郭城塁。ヤブだらけである。右側下に切り通し虎口がある。

４郭に落ちていた瓦。かつて櫓でも建っていたのであろう。	４郭城塁の石垣。

５郭内部。こちらもヤブだらけである。	４郭南側下にある櫓台の石垣。

１郭と３郭との間の堀切。幅が２０ｍほどもある。	３郭側面部の石垣。

２郭側面部の石垣。	２郭北側下の枡形の石垣。重要な区画であったらしく、もっとも規模の大きな石垣となっている。

３郭西側角の石垣。	１郭北側下の郭。
麻底良城はもともとは秋月氏の支城として築かれた。　天正１５年（1587）に小早川氏が筑前に入部した際には、小早川氏の支城となり、関ヶ原役後に黒田氏が入部すると、黒田氏の６端城（北から若松城、黒崎城、鷹取城、益富城、松尾城、麻底良城）の１つとなるといった具合に各勢力がそれぞれ重視した城郭であった。　黒田時代には１万５千石で栗山氏が入城した。しかし、元和の一国一城令により、他の端城と共に破却されることになる。もっとも黒田時代には山上は詰めの城であり、山麓に居館が置かれていたと考えられる。山麓には現在でも「里城」「政所」「杉馬場」といった地名が残されているという。

鵜木城（朝倉市杷木林田）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。

　　　　　鵜木城の場所　　　　　　　　　杷木神籠石見学者のための駐車場

　鵜木城は杷木神籠石の南側の国道沿いにある。杷木神籠石は地図などにも掲載されているので、これを目指していくとよい。

　ありがたいことに国道沿いの上記の場所に杷木神籠石見学者のための駐車場が用意されている。

　そこに車を停めて南東側に歩いて行く。

　鵜木城は比高15ｍほどの低い台地に築かれている。こんもりとした台地になっているのでそちらを目指す。

　登り口は国道沿いに2カ所ほどあるので、どちらからでもテキトーに登って行けばよい。

　かつて城内は公園化されていたようなのだが、近年ではそれほど手入れがされていないようで、遊歩道のところ以外は草が生い茂っていた。

　そうして遊歩道を進んで行くと上の幅広の横堀に出て、さらにその上が1郭となっている。

　1郭には東屋が建てられていた。そこに案内板もあったので見てみたが、鵜木城に関するものではなく杷木神籠石に関してのものであった。

　鵜木城は基本的に単郭の城郭だったようで、その周囲を横堀が廻っているというだけの単純な構造である。

　本城である長尾城には全周に渡って80本以上もの畝状竪堀が掘られているのであるが、鵜木城では北東の角にわずかに見られるだけであった。

　鵜木城は長尾城の出城であり、城主は日田近江だったとされている。

　長尾城の入口にあることから、その進入口及び街道を監視するための施設だったと考えられる。


北側の駐車場から。	この辺りから登る。

かなり草が茂っている。	神籠石？

横堀	1郭の東屋

1郭	堀切

横堀	横堀

北側から見る1郭城塁	畝状竪堀

東側の側面部は加工されている。	横堀。

長尾城（朝倉市杷木林田）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。

　　　　　長尾城入口の場所

　長尾城は鵜木城の北側にそびえる比高70ｍほどの山稜に築かれている。

　長尾城を訪れるには杷木神籠石の案内に従って、国道の北側の道を進んで行けばよい。

　本来の登城道はそのまま舗装された道をまっすぐ進んで行った先にあったと思われるのだが、この舗装路は途中で崩壊してしまっており、立入禁止になっていた。

　その手前から左側に登って行く。その先に東側の墓地に登って行くための切通しの道が付けられている。

　この道をひたすら進んで行けば、長尾城との間の尾根に到達することができる。

　後はその斜面をまっすぐに登って行けば1郭まで登って行くことができるようになっている。

　比高70ｍほどであるから、わりとすぐに城域内に到達することが可能であった。

　城の郭は、南北に長い山稜を削平したもので、合計6つの区画に分かれている。

　1が最高所に当たり主郭だったと考えられる。

　1の北側に一段低く2郭があり、その先の尾根筋との間を三重堀切によって分断している。

　それぞれの郭はきちんと削平されているが、1郭以外はヤブになっている個所が多い。

　細長い尾根であるものの、これらの郭は広く造成されているため、郭面積を合計するとかなりの広さとなる。

　多数の兵員の駐屯が可能な城であったと言える。

　戦国期の拠点的城郭だったと見てよいだろう。

　そして長尾城の最大の特徴は、これらの郭を全方位的に取り巻いている畝状竪堀群である。

　畝状竪堀は秋月氏の城の特徴ともいうべきものである。全部で80本ほども構築されている。

　それぞれの規模はさほど大きなものではないが、これだけ多数造成されているのは圧巻と言ってもいいだろう。

　畝状竪堀好きの城マニアにとっては垂涎の城の１つである。

　長尾城の城域はかつての杷木神籠石の一部分となっており、その城域の一角を利用して戦国時代に長尾城が築かれたものと考えられる。

　秋月氏の支配領域の東方を監視するための城で、境目の城とも言うべき城であった。大友氏に対する備えの意味があったであろう。

　秋月家の記録によると長尾城の城主は木村甲斐守だったという。

　天正8年（1580）、大友勢が1500人の勢で攻め寄せてきたが、木村甲斐守の妻が奮戦したことにより撃退したというエピソードが残されている。

　天正13年には、大友宗麟の子の田原親家が長尾城攻略のため、針目城に在城したという記録が残されている。

　大友氏に対する備えの城として重要視され、それゆえ何度も合戦の舞台となった城であった。


車道はここで行き止まりとなっているので、この手前から左側の道を進んで行く。	すると墓地への切通し道がある。これをまっすぐ進んで行けば城内に到達する。

この先が城内。	土橋

畝状竪堀	腰曲輪

畝状竪堀	畝状竪堀

畝状竪堀	三重堀切

三重堀切	三重堀切

三重堀切	三重堀切

三重堀切	1郭土塁

2郭	畝状竪堀

畝状竪堀	3郭


畝状竪堀	4郭

畝状竪堀	畝状竪堀

畝状竪堀	5郭

６郭	畝状竪堀

畝状竪堀	畝状竪堀

畝状竪堀	6郭下の城塁と畝状竪堀

帯曲輪	畝状竪堀

畝状竪堀	畝状竪堀

腰曲輪	腰曲輪

腰曲輪	畝状竪堀
長尾城の城主は木村甲斐及び木村源太左衛門だったと伝えられている。秋月氏の主要な支城であった。　天正年間に大友宗麟の攻撃を受けたが、撃退したという話が残されている。

夕月城（朝倉市杷木古賀）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。

　　　　　　夕月城の場所（夕月神社）

　杷木古賀地区にある夕月神社が夕月城の跡なので、この神社を目指して行けばよい。

　大分自動車道杷木ICのすぐ北西側にある比高60mほどの山稜である。

　高速道路の側道を通って北側の細い山道を進んで行くと、夕月神社の参道入口に到達する。

　ここに駐車スペースがあるので、車を停めて参道を進んで行く。

　ただし、多少荒れた路面でも運転できるという人は、そのまま進んで行って3郭に駐車することも可能である。

　3から参道を登って行くと、側面部に二重の横堀があるのが見えている。横堀は参道によって一部破壊されているようである。

　それを登ったところが夕月神社の境内であり、これが1郭である。

　参道は南東側にもあり、こちらには堀に石橋が架かっている。

　1郭の北西側下には広大な２郭がある。１郭はそれほど広い郭ではないので、居住のための建物などは２郭に建てられていたのかもしれない。

　３から1の周囲を廻って2のところまで接続する車道が造成されているために、遺構の一部が破壊されているように見える。

　大規模な城ではないが、横堀がしっかりと構築されていた城であった。

　夕月城の城主等、歴史については未詳である。

　といったことから在地系の城というよりは、合戦時に取り立てられた陣城の可能性が高いと思われる。

　長尾城から近い位置にあることから、長尾合戦の際の大友方の付城だった可能性があると考える。


神社参道入口	3郭。ここにも駐車スペースがある。

横堀	横堀

横堀	横堀

夕月神社	横堀

横堀に架かる石橋	横堀

横堀	横堀

2郭へ続く林道	2郭

2郭	2郭

竪堀	横堀

岩切山城（朝倉市三奈木）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。

　　　　　岩切山城の場所（清岩寺の裏山）

　朝倉市三奈木にある清岩寺の背後の比高30ｍほどの山稜が岩切山城の跡である。

　ということで、この清岩寺を目指して行けばよい。

　清岩寺には駐車場がないが、参道入口の所の西側に集会所があったので、車はその前に停めさせていただいた。

　城に行くには2つの方法がある。

　１つは参道入口から右手の車道を進んで行って、境内の所から石段を登って1郭真下の墓地まで上がる行き方。この墓地のすぐ背後に1郭下の横堀がある。

　もう１つは清岩寺の石段を登って本堂まで進み、そこから西側に回り込んで行って、石段を上がって5郭から順番に登って行く行き方である。

　岩切寺から1郭までの比高は20ｍほどなので、どちらを通っても簡単に城域内に到達することができる。

　ちなみに私は1つ目の方法で登って行った。車道を通って登る方が簡単かと思ったからである。結果としては、たいして高い城山ではないので、疲労度はどちらもさほど変わらないだろう。

　城は地形なりに段郭群を造成した単純なものである。

　1郭以外にはすべて墓地が造成されており、後世の改変も考えられる。

　1郭の中央部には塚が１つあるが、櫓台と言えるほどの規模のものではない。　この塚の上に石碑があったので城址碑かと思ったのだが、そうではなく、そこには「方位起点樹」と刻まれていた。

　1郭の東側下には横堀が構築されており、これで東側の尾根部分との間を区画していたようである。


清岩寺入口	島原の乱で戦死した新免貫清の供養塔

1郭下の墓地に上がる石段	1郭下の墓地

その奥にある横堀	横堀

横堀	1郭の塚

1郭塚の上にある石碑	2郭へ

2郭	3郭

階段	4郭

清岩寺	清岩寺

休松城（安見ヶ城・朝倉市下渕）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。

　　　　休松城登城道の入口　　　　　　　　休松城方面への林道入口

　休松城は、比高240ｍほどの安見ヶ城山に築かれている。したがって城内での案内表示も安見ヶ城となっているのだが、上記の書など関連書籍では休松城となっていたので、ここでもその名称を採用することとした。

　このように高所の山に築かれているのだが、西方から林道が付けられており、1郭まで比高50mほどの高さの所まで車でアクセスすることができるようになっている。

　ということで上記の林道入口の所から車で進んで行く。この道は舗装されている道なのだが、けっこう荒れてしまっている。

　舗装路にしてはかなり車をがたがたとさせながら延々と運転していくことにある。

　しかも「大型車が通行するので注意」といった看板があり、大型トラックと遭遇したらどうしようと不安になりながら運転していくのである。

　幸い大型トラックと出会うことはなかったのだが、この林道の先に採石場があるようで、大型が通行することもあるらしいので注意しておいた方がよいだろう。

　この林道を進んで行った先の右手に林道が分岐しており、車を停められるスペースがあるのが見えてくる。

　その先も舗装路が続いているのだが、柵が設置されている。柵を開けて車を乗り入れようと思ったのだが、柵には鍵が架けられていた。これでは開けられない。

　仕方がないので、そこに車を停めて、舗装路を歩いて進んで行く。

　立派な舗装路を300ｍほど進んだところでトイレの設置してある広場のようなところに着いた。ここから遊歩道を登って行くことになる。

　遊歩道は2か所から付けられているようである。登り口が少し分かりづらいが、登って行くとすぐにちゃんとした道となっている。

　後は遊歩道に従って進んで行き、山稜を登り切ってしまえは1郭に到達する。

　1郭は東西に長く、途中の土塁によって構築された虎口のようなものがある。

　また、1郭には城の案内板が設置されていた。

　1郭の東側一段下には2郭がある。2郭にも先端部に虎口が形成されていた。

　が、いずれの虎口も小規模なものである。

　多少技巧的であるとは言えるが、加工度はそれほど大きくなく、天険の要に頼った山城だったというべき城である。後述する休松合戦の際に改修された陣城と見るべき城かもしれない。


右手に分岐した林道の途中。封鎖されているので、この手前に車を停めて歩いて行く。	300ｍほど進んで行くとトイレがある。この辺りから登城道に入る。

登城道	途中の案内

案内	1郭城塁

1郭虎口	1郭

1郭	1郭

2郭へ	2郭

2郭	2郭

畝状竪堀	畝状竪堀

1郭城塁	1郭

虎口	虎口
秋月氏２４城の１つ茄町城というのが、この城のことであったと考えられている。　永禄10年（1567）に豊後の戸次鑑連・吉弘鑑理・臼杵鑑速らといった大友勢力が秋月種実を攻めた際に、大友方の戸次鑑連が休松城に入城していたが、秋月方の夜襲を受けて撃退されたという。　この戦いを休松合戦と呼んでいる。　この敗戦がきっかけとなり、大友勢は崩れて豊後に引き返して行った。

稲荷山城（朝倉市秋月）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。

　　　　稲荷山城の場所

　稲荷山城は荒平城から国道322号線を西方に1.2ｋｍほど進んで行った所にある。

　山麓からの比高60mほどの山稜で、北西側の尾根続きを国道によって分断されている。

　この切通し部分の近くに車を停められるスペースがあったので、そこに車を停めて、後は切通し部分の脇からよじ登って行く。

　かなり急峻な斜面だが、国道からの比高は20ｍほどであるから、頑張って登って行けばすぐに尾根に到達する。

　尾根上は若干の平場となっており、中央部が高く盛り上がっている。

　その先に小規模な堀切があった。

　そこから1郭に向けて尾根が続いているが、まったく削平されておらず、郭とは言えない状態である。

　その先にしっかりとした堀切があり、1郭の城塁がそびえているのが見えている。

　1郭は長軸40mほどの郭であり、基本的には1郭だけの単郭の城郭と言ってもよさそうな形態である。

　1郭の周囲には若干のテラス状の郭があり、その側面部に何本かの畝状竪堀が構築されている。

　荒平城などと同様、秋月氏の城の特徴というべきものである。

　1郭の堀切の所から国道方向に向けて、東側の斜面下に林道のような通路が付けられていた。

　腰曲輪のようにも見えるものだが、これは何かの作業道の跡なのではないかと思われる。

　稲荷山城の城主等、歴史については未詳である。

　荒平城の西方にあることから、荒平城の西側を監視するための支城だったと考えられる。


国道の駐車スペースから城の切通しを見る。この辺りからよじ登る。	最初の平場

自然地形の尾根	堀切

堀切	1郭城塁

城塁	畝状竪堀

畝状竪堀	テラス状郭

畝状竪堀	郭

郭	テラス状郭

堀切	２郭側面部の道

荒平城（朝倉市秋月野鳥）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。

　　　　　荒平城Ⅰの入口　　　　　荒平城Ⅱの入口　　　　　荒平城Ⅲの入口　　　　　荒平城Ⅴの入口

　荒平城は、独立性の高い５つの城域によって形成された大規模山城である。秋月氏の詰の城とも言うべき城で、畝状竪堀が各所に見られるのが大きな特徴となっている。

　現在、Ⅰの区画と、Ⅱ、Ⅲ、Ⅴの区画との間を国道322号線が通って分断されている。これらの城郭を効率的に見るために、私は国道沿いに車を停めて、そこから、それぞれの区画にアクセスしてみることにした。

　Ⅰの城真下に当たるこの場所に車を停められるスペースがあったので、車はそこに停めさせていただいた。

　この国道は交通量がけっこう多く、大型車もかなりスピードを出して走っているので、横断する際には注意が必要である。

　駐車したところのすぐ真上がⅠの城の部分である。特に道はないので、その上の斜面を直登してみることにする。

　これがなかなか急斜面で少し苦労するのだが、比高20ｍほどであるから、頑張って登って行けば短時間で下の郭の所まで到達する。

　そこから先はヤブでもなく見通しの良い郭となっていた。正面奥に1郭の城塁が鋭くそびえて見えている。

　1郭に近づいてみたが城塁が鋭すぎて直登は無理であった。東側には2郭があり、さらにその先の尾根筋は堀切によって分断されていた。こちら側からはとても1郭には登れない。

　次に西側に回り込んでみると、こちら側の斜面からなら登れそうであったので、そこから登ってみる。この方向に登城道があったのであろう。

　1郭はそれほど広くもなく数段に形成されていて、2郭側に土塁を配置している。地形なりに削平されてはいるが、主郭としては手狭な印象である。

　東側には鋭い堀切が掘られ、その先の小郭との間を区画している。1郭の西側下にも広い郭があり、その先は国道によって分断されている。

　下の国道に戻って、今度はⅡの城を目指していく。国道によって分断されたⅡの付け根付近まで行くと、城内の方に入り込んで行く林道のようなものが見えた。これを進んで行く。

　林道はそのすぐ先で行き止まりになってしまっていたのだが、そのまま進んで行くと堀切の所に出た。この堀切から先がⅡの部分の城域内ということになる。

　そこから先は郭が段々に形成されているだけの単純な構造である。１の部分が一番高く、すぐ下に土塁を配置した郭があるので、これが中心部分だったと思われる。

　段々の郭を配置しただけの構造ではあるが、それぞれの郭の面積はそこそこあり、すべてを合わせるとけっこうな郭面積となる。かなり多数の人数を収容することができる城域と言える。また切岸の高さも高い。

　そしてこれらの部分を囲んで畝状竪堀が多数構築されているのが最大の特徴となっている。

　再び国道に戻って、今度は城域Ⅲの城を目指していく。こちらも分断された尾根の脇まで行くと、奥に入って行く獣道のような道が見えたので、これを進んで行く、

　道は上の郭の側面部を通って、その先の郭の所に出た。

　その郭の先には小規模な堀切があり、さらに土塁囲みの郭がある。この辺りがⅢの中心的な部分であろうか。

　そこから南側にかけて段郭が続いているが、１つ１つの郭との段差がかなり大きい。南側の下から順に攻め上がってくる敵はかなり苦労したことであろう。

　南端近くに広い郭があり、そこに石仏が祀られていた。

　その下は自然地形の尾根となって、Ⅳの城へと接続している。

　Ⅲの城域の西側の下には腰曲輪状の郭が段々に配列されており、その下に畝状竪堀が構築されている。Ⅲの城もⅡの城と同様に西側に畝状竪堀を配置している。西方からの敵の防御を強く意識していたようである。

　畝状竪堀群の下にも平場があり、そこには古い墓地が形成されていた。

　Ⅲの部分から自然地形の尾根を隔ててさらに南側の尾根に進んで行ったところがⅣの城である。

　尾根には小規模な堀切が掘られ、その先に一段高い区画が見えている。これが１の部分で、ここがⅣの城の最高所に当たり、主郭というべき部分である。

　そこから南側にかけて多数の段郭が造成されている。その間には道が付けられており、下の寺院からここまで登ってくることができるようになっているらしい。

　Ⅳの段郭群には古い墓が多数転がっていた。現在ではお参りする人もいないらしくて、どの郭の墓も荒れてしまっていて、なんだか凄まじい状況となっており心寒くなる。

　これらの段々も郭として造成されたものだと考えられるが、墓地の造成によってある程度の改変はあったかもしれない。

　Ⅳにも畝状竪堀群が構築されているのだが、ⅡやⅢとは異なり、東側を中心として構築されている。ⅡとⅣとの間の谷戸部に入り込んでくる敵を意識していたのであろうか。

　さて、次はⅤの城であるが、Ⅴは西側にやや離れており、一枚の鳥瞰図に納めることができなかった。Ⅴは次の項目で紹介することとする。


国道から。ここに車を停めてⅠの斜面（右側）をよじ登って行く。	下の郭

1郭城塁。	2郭との間の堀切

尾根続きを分断する堀切	堀切

1郭城塁	竪堀

畝状竪堀	土塁

1郭城塁	堀切

西側から1郭に登って行く。	1郭の下の段

1郭	1郭の石積み

堀切	下の郭
荒平城は、秋月氏の本城とも言うべき城であり、その巨大さはそのまま秋月氏の勢力の大きさを表していると考えられる。　古処山城が秋月氏の詰城、荒平城は里城と呼ばれているとのことだが、こちらもしっかりとした山城で規模も大きい。里城というと居館を示しているようだが、そんなものではない。　秋月氏の籠城用の城はむしろこちらではないかと感じる。　天正14年（1586）の秀吉による九州平定の際、秀吉は荒平城に逗留したと伝えられている。　そのことからも荒平城が拠点城郭であり、重要な城であったということが分かるだろう。


再び国道まで戻ってきた。次はⅡの城へ。	Ⅱの入口の林道

その先の郭	堀切

堀切	郭

郭	堀切

郭	畝状竪堀

畝状竪堀	帯曲輪

畝状竪堀	郭

郭	郭

郭	石列
次はⅢの城へ。


三たび国道まで戻ってきて、今度はⅢの側面部に入って行く。	踏み跡のような細い道を通って城塁の側面部へ

郭	堀切

堀切	郭

郭	竪堀

郭	郭

石仏	堀切

堀切と土橋	堀切

畝状竪堀	畝状竪堀

畝状竪堀	畝状竪堀

畝状竪堀の下の墓地。	郭
次にⅣの城。


Ⅲから尾根を通って、今度はⅣに入って行く。	堀切

城塁	郭

郭	郭

郭	古い墓地

古い墓地	古い墓地

古い墓地	古い墓地

古い墓地	郭

郭	郭

荒平城Ⅴ（いち木尾城・朝倉市秋月野鳥）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。

　荒平城Ⅴも、荒平城郭群の一角を担う城郭であるが、他の城よりもやや西側に位置しており、若干離れている。

　この城は、いち木尾城とも呼ばれており、独立性の高い城郭群の中でも、ひときわ隔絶した城郭となっている。

　荒平城Ⅲの入口の所から西方に200ｍほど国道を進んで行くと、Ⅴの入口に到達する。

　2025年5月現在、Ⅴの部分は木がすべて切られて、城山の状態がはっきりと視認されるようになっていた。

　それはよいのだが、城内は重機によってだいぶ破壊されているように見える。

　発掘調査をしたようにも見えないし、これはこのまま破壊されてしまうのであろうか。

　荒平城は秋月氏の本拠とも言うべき重要な遺跡であると思われるのだが、発掘調査もされずに破壊されてしまうなんていうことがありうるのだろうか。

　今後どうなってしまうのか心配である。

　Ⅴは1の最高所を中心に、段階的に郭を配置しただけの比較的単純な構造の城である。

　それらの下方に帯曲輪が造成され、その下におなじみの畝状竪堀群が造成されている。

　荒平城の城郭群の中では最も規模が小さく、西方から接近する敵に備えた出城のようなものだったのであろう。


国道沿いからⅤに入って行く。木がすべて切り払われている。	2025年5月の状態。破壊されてしまうjのだろうか。

重機で削られた道。痛々しい・・・。	重機に蹂躙された郭

郭	郭

城塁	郭

城塁	郭

削られている城塁	重機の跡

作業道と城塁	作業道と城塁

削られた城塁	城塁

坂田城(朝倉市上秋月）

＊鳥瞰図の作成に際しては『福岡県の中世城館跡』（福岡県教育委員会）の図を参考にした。

　　　　　坂田城の跡（秋月八幡宮）

　秋月城の南側にある秋月八幡宮が坂田城の跡ということなので、この神社を目指して行けばよい。

　神社の参道は南側から付けられているのだが、すぐ北東側まで車道も付けられている。この車道を進んで行けば、神社の境内まで車を乗り入れることが可能である。

　境内には数段の平場が造成されているが、明確な遺構というものは見られない。

　それでも腰曲輪なども見られるので、なんとなく城郭らしい雰囲気を感じることは可能である。

　北側にある池を挟んで、その先の東西に延びる山稜には堀切状の部分があり、こちらが出城であったかと思われる。

　ちなみにgooglemapでは、この北出城の部分に坂田城という名称を付けていた。

　坂田城の城主等、歴史については未詳であるが、秋月城の南側の山稜に築かれていることから、秋月城の南部の入口を監視するための支城であったと思われる。


八幡神社の城塁	八幡神社

八幡神社	石段

郭	郭

忠魂碑